第42回 大分国際車いすマラソン 見どころ

 パリパラリンピックの開幕まで1年を切ったなか行われる今回の大分国際車いすマラソン。今年も世界のトップランナーが大分に集まった。
 今大会の最大の特徴は、例年フィニッシュ地点として使われていた大分市営陸上競技場が改修工事のため、今年はトラックフィニッシュではなくロードでフィニッシュを迎える点だ。おととし大幅なコースリニューアルを行いフラットな周回コースになったことで世界屈指の高速コースになった大分国際は、その年にマルセル・フグが22年ぶりの世界記録をマークし、それまでの記録を約2分半も上回るタイム(1:17:47)は世界中を驚かせた。さらなるスピードアップが期待される今年のコース変更でどんな記録が生まれるのか興味は尽きない。
 
 優勝候補筆頭はマルセル・フグ(スイス)。おととしの東京パラリンピックでマラソンとトラックの4冠に輝いた世界最高のランナーは、7月に行われたパリの世界パラ陸上でもトラック種目で3冠を達成。マラソンでも東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴとメジャーマラソンを全勝しているだけでなく、いずれのレースも2位を引き離す圧倒的な内容で、まさに異次元の走りを続けている。大分国際でも2010年以降、フィニッシュした10大会のすべてで優勝しており、今大会は5大会連続11回目の優勝とともに、2年前に自身がマークした世界記録の更新を狙う。
 日本勢では前回2位の鈴木朋樹に期待がかかる。トラックとマラソンの両方でパリパラリンピック出場を狙う日本長距離界のエースは、4月のボストンで3位、9月のベルリンで4位と今シーズンの海外マラソンで結果を残している。7月のパリ世界パラ陸上では800mと1500mに出場したものの予選落ちの悔しさを味わったが、優勝1回、準優勝5回と相性の良さを見せる大分国際でフグにどこまで迫ることができるのか注目だ。
 
 今年は女子の戦いが例年以上に激しさを増しそうだ。健常者の女子マラソンで2時間11分台という衝撃の世界記録が誕生した9月のベルリンマラソンで、車いすの部でもスイスの新鋭カテリーヌ・デブルナーが2019年の大分国際でマークしたマニュエラ・シャー(スイス)のタイムを1分30秒近くも短縮する1:34:16の世界新記録をマークした。去年の秋に初マラソンを走った28歳のデブルナーは今シーズン急激に力をつけ、パリの世界パラ陸上では400m、800m、1500m、5000mで4冠を達成し、一気に世界のトップに躍り出た。メジャーマラソンでも秋のベルリンとシカゴを連勝中で、今最も旬なランナーといえる。そのデブルナーが大分国際に初エントリー。前世界記録保持者のマニュエラ・シャーや去年の大分国際2位のスザンナ・スカロニ(米国)もエントリーしていることから3つ巴の優勝争いとともに、大分では4年ぶりの女子マラソン世界新記録の期待もかかる。
 日本勢では日本記録保持者の喜納翼と去年優勝の土田和歌子がエントリー。力のある外国人選手の集団で我慢の走りができれば日本記録の更新も十分に視野に入る。
 
 このほか、男子のフルマラソンには大分国際優勝14回のレジェンド、65歳になったハインツ・フライ(スイス)が4年ぶりに出場する見込みのほか、パリパラリンピックを狙う日本の渡辺勝や西田宗城、ベテランの副島正純や洞ノ上浩太といった実力者もエントリー。世界最高峰のメンバーが今年も大分の街を駆け抜ける。
 また、一般ランナーも含めフルマラソンに77人、ハーフマラソンに146人の計223人がエントリーした今年の大会は、レース前日の開会式後に行われるパレードやレース後の交歓の夕べが4年ぶりに復活するなど、コロナ禍以前のスタイルで行われることも注目される。
 
 大会の模様はOBSテレビ、ラジオで実況生放送するほか、BS-TBSを通じて全国に向けても発信する。ボランティアスタッフの温かい大会運営と沿道からの多くの声援が世界中の車いすアスリートから称賛されている大分国際車いすマラソン。世界のトップランナーから完走を目指す市民ランナーまで、秋の大分を彩る全ての選手たちに大きな声援を期待したい。

OBSアナウンサー 吉田諭司
(文責:OBS大分放送 吉田諭司)

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