今年の車いすマラソンの見どころ

もっとも障害の軽いクラスで10年ぶりの日本人チャンピオンが誕生した去年の大会。優勝候補大本命とみられていたマルセル・フグ(スイス)が2kmすぎにクラッシュしリタイアという衝撃的なレース展開となった混戦の大会を制したのは50歳の山本浩之(福岡)。4年連続2位と悔しい思いを持ち続けていたベテランが、ついに25回目の出場で掴んだ栄光だった。2位は22歳の新鋭鈴木朋樹(東京)。もっとも障害の軽いクラスのフルマラソン日本人ワンツーフィニッシュは大会史上初の快挙となった。
またもっとも障害の軽いクラスのフルマラソン女子も喜納翼(沖縄)が初優勝。それぞれのクラスで日本人選手が大活躍した大会となった。
2020年東京パラまであと3年となった今年の大会。トラック種目でスピード強化に取り組む選手や、世界のメジャーマラソンを転戦してスタミナアップをもくろむ選手などそのアプローチ方法は様々だが、今年1年のトレーニングの成果が問われる秋のビッグレース大分国際。今年も世界各国から一流のアスリートがエントリーした中、男女とも世界記録が生まれた世界屈指の高速コースでどんなドラマが生まれるのか。車いす単独マラソンとしては世界一の規模を誇る大会が間もなくスタートする。
スタートする。

【1】日本人初の大会連覇なるか?

去年優勝の山本浩之。去年の優勝をはじめ2位6回、3位1回と、大分国際とは抜群のコース相性を誇る。今年51歳になる大ベテランだが、4月のボストンマラソンで日本人2人目となる1時間20分を切るタイムをマークし3位に入賞するなどその実力は健在。「ディフェンディングチャンピオンとして臨む意識はない。目標は3位以内」と謙虚に語るが、その眼は確実に今年も頂点を捉えている。もっとも障害の軽いクラスの連覇を達成すれば、日本人として大会史上初の快挙。その可能性は十分ある。
日本人初の大会連覇なるか?

【2】若手の躍進は?

去年2位に入った23歳の鈴木朋樹。フルマラソン4回目という経験の少なさを補って余るべく類まれなスピードで見事な結果を残した。今年は7月のロンドン世界陸上で800mと1500mの2種目で入賞。主戦場はトラック競技だが、ロンドンやシカゴなどフルマラソンにも積極的に取り組み経験値をアップさせている。「フグに勝って優勝したい」とマルセル・フグに真っ向勝負を挑む若武者が、初の頂点を目指す。
また去年4位の西田宗城(大阪)も虎視眈々。今年はホンダ製のニューレーサーを手に入れ、持ち前のスタミナに加え高速展開できる力をつけた。33歳の今年は世界のメジャーマラソンを転戦し、経験も積んだ。「過去2年連続4位なので何としても表彰台を狙う。優勝して初めて見える景色を見てみたい」と語る実力者が大きな結果を残せるか注目したい。
さらに去年ハーフマラソンを大会新記録で連覇を果たした渡辺勝(福岡)が、満を持して大分国際初のフルマラソンにエントリー。今年は2月の東京マラソンでマルセル・フグを破り、見事初優勝を果たして大きな注目を浴びた。7月の世界陸上でも5000mで5位に入賞し結果を残した25歳の新鋭は、「ロードよりトラックで勝負したい。今回は先頭集団についていきたい」と不気味に語る。日本記録保持者の洞ノ上と同じチームでつけてきた力を、大分で出すことができるのか。

【3】世界最強ランナーマルセル・フグの巻き返しは?

大会7連覇を目指した去年はまさかのクラッシュ。序盤でレースを去ることになってしまったマルセル・フグ(スイス)だが、今年もレースの中心は間違いなくこの選手になる。去年の大分国際の後、11月のニューヨークシティ、4月のボストン、9月のベルリン、10月のシカゴと世界のメジャーマラソンで次々に優勝。800mと1万mの世界記録も持つスピード、スタミナ併せ持つ世界のトップランナーは年を重ねるごとに強さに磨きをかけている。2年ぶりの優勝に加え、今年のボストンで1時間18分台をマークした驚異的なスピードで、99年に大分でハインツ・フライ(スイス)がマークした世界記録を18年ぶりに塗り替えられるかにも注目が集まる。

【4】実力者たちもエントリー。上位は混戦か?

日本記録保持者の洞ノ上浩太(福岡)。リオパラマラソン日本代表の副島正純(長崎)、久保恒造(北海道)、地元の声援を受ける廣道純(大分)など実力者もそろってエントリー。海外勢も過去3度の優勝を誇るエレンスト・ヴァンダイク(南アフリカ)や優勝14回のレジェンド、ハインツ・フライ(スイス)、リオパラマラソン4位のリュウ・チェンミン(中国)など強力なメンバーが顔をそろえた。例年以上に激戦が予想される上位争いにも注目が集まる。

OBSでは大会の模様をテレビ、ラジオで完全実況生放送。解説にアテネパラとロンドンパラマラソン日本代表の花岡伸和さん。ゲスト解説に北京五輪女子5000m日本代表の小林祐梨子さんを迎えてお送りします。注目の大会をお見逃しなく。

OBSアナウンサー 吉田諭司
(文:OBSアナウンサー 吉田諭司)